自動デレバレッジ(ADL)とは?
自動デレバレッジ(ADL)とは、市場の極端な変動や不可抗力による影響で、保険基金が急速に減少した場合に発動される強制決済メカニズムです。取引相手のポジション不足が発生し、プラットフォーム全体のリスク管理が必要となった際に、ADLエンジンはレバレッジ収益が最も高いトレーダーを優先的に選び、ポジションを強制的に削減します。
ADLの仕組み
ADLのランク付け
ADLのランクは、ポジションのレバレッジ収益(収益率と有効レバレッジ)を基準に決定されます。
レバレッジ収益が高いほど順位が上がり、ADLエンジンによって優先的に選ばれます。
トレーダーは 「ADL指標」 によって、自身のポジションがADL対象の中でどの順位にあるかを確認できます。指標は5段階のランプで表示され、点灯数が多いほど順位が高く、ADLのリスクも高まります。
ADL指標
順位の計算式
ポジションがプラス収益の場合:順位 = 収益率 × 有効レバレッジ
ポジションがマイナス収益の場合:順位 = 収益率 ÷ 有効レバレッジ
有効レバレッジの計算式
有効レバレッジ = abs(マーク価格 ÷(マーク価格 - 破産価格))
正方向先物(USDT建先物)
ロングポジションの利益率 =(マーク価格 - 平均約定価格) ÷ 平均約定価格
ショートポジションの利益率 =(平均約定価格 - マーク価格) ÷ 平均約定価格
反対方向先物(コイン建先物)
ロングポジションの利益率 =(平均約定価格 - マーク価格) ÷ 平均約定価格
ショートポジションの利益率 =(マーク価格 - 平均約定価格) ÷ 平均約定価格
ADLの発動条件
ADLが発動されると、システムはADLランクの上位アカウントを選び、 破産価格と保険基金補填額に基づいて決定された価格でポジションを決済します。
- 分離マージン(分離モード):ロング・ショートポジションどちらもADLの対象となります。
- クロスマージン(クロスモード):完全にヘッジされたポジションはADLの対象外となります。未ヘッジ部分のみADLの影響を受け、ヘッジ済みの部分には影響しません。
ADLで決済されたポジションには取引手数料は発生しません。
ADLの実行後
ADLが実行されると、 該当ポジションが削減され、その利益は口座残高に反映されます。
トレーダーにはSMSおよびメール通知にて、削減されたポジションと決済価格の詳細が送信されます。また、「注文履歴」ページで「ADL」として記録が確認できます。
ADL完了後、トレーダーは自由に市場へ再参入し、取引を続けることが可能です。
説明例
例えば、トレーダーの口座残高が10,000 USDTで、BTC/USDTの価格が20,000 USDT の時に 10倍レバレッジで5 BTCのロングポジションを開設したとします。
- 清算価格:19,090 USDT
- 破産価格:19,000 USDT
- 保険基金補填後の価格:18,090 USDT
この場合、 市場で18,090 USDT以上の価格でポジションを決済できない場合、ADLシステムがポジションを引き継ぎます。
市場に以下の5つのショートポジション(反対方向のポジション)が存在するとします。
トレーダー |
BTCショートポジション数量 |
ランクスコア(収益率×有効レバレッジ) |
ランク割合 |
A |
3 BTC |
5 |
上位 0-20%(5灯) |
B |
3 BTC |
4 |
上位 20-40%(4灯) |
C |
2 BTC |
3 |
上位 40-60%(3灯) |
D |
2 BTC |
2 |
上位 60-80%(2灯) |
E |
3 BTC |
1 |
上位 80-100%(1灯) |
この場合、ADLシステムはAとBを選択し、Aの3 BTCショートポジションとBの2 BTC ショートポジションを18,090 USDTで強制決済します。
Bの残りの1 BTCショートポジションは保持されます。
ADLリスクの軽減方法
ADLは極端な市場状況でのみ発動されます。通常の取引では、ADLの対象になるリスクを気にする必要はありません。
ただし、 極端な相場でADLリスクを抑えたい場合は、以下の対策が有効です。
- レバレッジを下げる:使用レバレッジを低くすると、 ADLリストの順位が下がり、対象になりにくくなります。
- 利益確定のために部分決済を行う:これによりADLリストの順位は変わりませんが、 ポジションサイズが減るため、自動デレバレッジの影響を受ける数量を抑えることができます。
コメント
0件のコメント
記事コメントは受け付けていません。